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平成28年 年頭挨拶

明けましておめでとうございます。

手仕事で丁寧に造られた日本の伝統建築は、新しいことに価値を見いだす現代のものづくりとは逆に、時を経て「古びる」ことによって「時が醸し出す美しさ」を備えていきます。この、時とともに熟成し、深みや奥行きを増していく美しさを「風流美」と名付け、その価値をみなさんにお伝えしていくために「オンライン風流美」サイトを開設して二度目の新年を迎えます。

昨年、私どもの長年の念願がかない、突き上げ屋根をもつ甲州型民家群のすばらしい景観を有する上条地区が「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されました。気候風土や暮らしの中から生まれ、人々に継承されてきた地域の民家の形が広く知られ、未来につながっていくきっかけができたこと、大変嬉しいできごとでした。上条地区には、景観を楽しめる散策コースももうけられていますので、訪ねていただければ、幸いです。

甲斐の国 風流美スポット おでかけガイド:上条集落

古くからの家並み景観を保存活用する一方で、甲州型民家のよさをこれからの新築の家づくりにも積極的に活かす試みにも取り組み続けています。直近の事例として、住まわれて半年が経った御家族の暮らしぶりをお届けしていますので、ご覧ください。「風流美」を備え、かつ、より明るく、あたたかく、気持ちよく暮らせる家づくりをすることで、将来にまで「平成の甲州民家」として愛され、住み継がれていくことを願っています。

風流美の家に住む:「突き上げ屋根の家」

また、昨年は、親子二代の俳人、飯田蛇笏・龍太が発行し続けてきた俳諧誌「雲母」が大正4年(1915年)に創刊して一世紀という節目の年でもありました。蛇笏親子は、住まいである「山廬」にかつてあった穀物蔵の二階を「俳諧堂」として使っていました。二人の俳諧を生んだ場所を後世に伝えていくために、蛇笏のお孫さんにあたる飯田秀實さんが理事長となって「一般社団法人 山廬文化振興会」が立ち上がり、この俳諧堂を復元再生する動きが始まっています。当社では、別の場所への移築後朽ちかけていたこの蔵の解体保存、復元再生の設計案づくりで、関わらせていただきました。そのご報告を簡単にまとめましたのでご覧ください。今年も、山梨が愛する俳人の足跡をしっかりと残していくために、精一杯努めてまいります。

風流美を語る:「蛇笏の俳諧堂復元へ」

古民家の再生、古材や古建具を活用した家づくり、社寺建築や文化財の保存修理、地域文化の継承など、建築に携わる立場から、日本のよき伝統文化を未来につなげていく。それが、私たちの夢であり、使命でもあります。今年も皆様のご助力を得ながら、より一層の努力をしてまいりたいと所存です。

この「風流美」サイトを通して、さまざまな情報発信をしていきますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

平成28年 元旦

伝匠舎 石川工務所
石川 重人